【読書感想文】うどんみたいにつるりと読んだ

f:id:plum_eye_eye:20211214105405p:plain

おなじコンビニで18年間アルバイトを続ける。

これは異常なことなのか。普通に考えたら異常だと思うかもしれないけれど、私たちのいう普通に考えたらの「普通」は果たして本当に普通なのか。

そんなことを考えながら読んでいたら、いつのまにか最後まで読み終えてしまっていた。おそろしい。つるりと食べきったうどんのようでした。

 

実は私がはじめて村田沙耶香さんと出会ったのは、この『コンビニ人間』ではありません。2019年に見た「inseparable 変半身(かわりみ)」でした。その演劇に村田さんは原案として関わっていらして、パンフレットを見た私も「あー『コンビニ人間』の人なのね」と、そんな感じでした。

詳しくは話すと長くなるんですけど、舞台設定が(変態な意味で)すごくて正直「なんだこの世界観…こんなの誰が思いつくんだよ…」と困惑しながら見た記憶があります。アフタートークまで聞いたのに、私の感想メモには謎のポエムしか残っていません。相当なインパクトだったのだと思われます。

 

 

 

本題に戻します。

 

おなじコンビニで18年間アルバイトを続ける。

 

この状態を「普通」と言えるかという問いに対して、私はどう答えたらよいのでしょう。私の思う「普通」とは違うとしか言えません。

 

でも、この「普通」って誰が作ったものなんだろうって思います。

「普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ。」(115頁)

普通の人間はけっして人間を攻撃しようとしているわけではないんです。自分とそして周りと違って、普通じゃない(=おかしい)と感じるから、だから糾弾していく。

私はおそらく「普通」の人間に近くて、今も自分とは違う「普通じゃない」人間をあーだこーだ言って、楽しんでしまっているのかもしれない。

もしそうならそれは、どんなに恐ろしいことなんだろうと思います。

 

 

幼いころから自分が「普通」ではないことに気づいていた主人公は、自分自身をコンビニの一部にしていくことで、その違和感から逃れていました。

 

それが崩れていくのが物語の後半。

 

完全なコンビニ人間でなければ「普通」と認められないことを、それを「普通」じゃないと感じてしまっている私が悲しいなんて思っていいのか。それは自分とは違う考えや価値観を持つ人を無意識的に傷つけているんじゃないのか。

私にとっての「普通」の人間ってなんだろう。

 

圧巻の150頁でした。