【エッセイ】絵本の「二冊目」を買う理由

f:id:plum_eye_eye:20211115231944p:plain

私はこの日もアルバイトをしていた。

 

贈り物に選んでいただけることが多い書店。

冬の凍てつくような寒さに合わせて

しっとりとしたBGMが流れるようになってきたこの頃。

 

 

注文商品が届いたというおばあさんが私のレジにやってきた。

名前とタイトルを聞いて、本を探す。

 

絵本を頼んでいたらしい。

 

頼んでいたものが合っているか確認し、レジに通す。

ピッ、ピッという電子音が響く。

 

 

すると、おばあさんが「ラッピングをお願いしたいんだけど…」

と私に伝えてくれた。

私のアルバイト先である本屋さんでは、贈り物用のラッピングを承っている。

 

ラッピングは誰かをワクワクさせるための準備、

そのお手伝いをしているみたいで楽しい。

 

先に会計を済ませて、包装紙を選んでもらう。

おばあさんはかわいらしい動物が載ったものにするそうだ。

 

さっそくラッピングに取り掛かる私に、

おばあさんはこの本を注文して買ってくれた理由を教えてくれた。

 

 

 

実はおばあさん、この絵本は二冊目だそう。

ラッピングし終えてキラキラのシールとリボンをつけた「二冊目」は、

遠くにいる娘さんとお孫さんのところに贈るらしい。

 

こんな状況だから会えないけれど、プレゼントとして贈りたいのだという。

おばあさんは以前この店で買った「一冊目」をとても気に入り、

この絵本を大切な人に届けたい、そう思ったそうだ。

 

 

私は胸がジンとあつくなった。うれしかった。

 

 

それは、本という存在が誰かの心を届いているんだとに改めて気づけたからだ。

 

この「二冊目」の絵本には、

おばあさんの、娘さんやお孫さんに会いたい気持ちがたくさん詰まっている。

 

大切な人を思う気持ちがたくさん詰まっている。

 

贈る側、受け取る側の両方が

「二冊目」の絵本を通してあったかい気持ちを共有するのだろう。

 

そして、私の働いている場所が

そんなあたたかさを届ける助けをしていることが誇らしかった。

 

私がラッピングした「二冊目」は

多くの人の力を借りながら、

遠くにいるおばあさんの大切な人のもとに届くのだろう。

 

ワクワクしながらページを開いていてくれるといいな、そう思う。

 

 

誰かの、大切な人を思う、あたたかな気持ちは、

今日もどこかで届けられているんだろう。

 

その過程にちょっぴり関われたことがうれしい。

 

 

絵本の「二冊目」を買う理由は、とってもやさしくてあったかい。